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海の都で
今から10年ほど前に、
作家 塩野七生さんの小説『海の都の物語』で
ベニス(ベネチア)の栄枯盛衰が描かれ、ベストセラーになったことから、イタリア1国だけを巡るツアーが多くなってきた。
その北イタリアのベニス。
夕やみが迫り、昼間色とりどりの衣服をまとった観光客でにぎわったサンマルコ広場あたりは、街灯に明かりが入り、ゆっくりと夜の装いになっていった。
『ゴンドラ・セレナーデ』の運河巡りにゴンドラ2艘に分乗、出発したのは第3回夫婦円満旅行の一行だった。
1993年(平成3年)9月、ローマを振り出しに、
ウフィッツ美術館のあるフィレンツェ、
中世のたたずまいのアッシジ、そして
サンマリノ公園を巡りベニスに入った。
昼食は、ホテル・ガブリエリのレストランのコーナーを利用した恒例の『おにぎりパーティー』。
旅行も2週間になると、途中で日本食が恋しくなる。
そこで、それぞれ日本から持参してきた
おにぎり・お粥・みそ汁・牛丼・お新香・梅干・しょう油
などを持ち寄り毎回旅行中に1度開いている。
おにぎりなどすべてお湯があれば現物となるインスタントだ。

レストランのウェーターも入ってワイワイ、ガヤガヤと準備していると、外人客が物珍しそうに近寄ってきた。
お粥に興味を示した様子で、ボールに梅干を添えすすめると、おそるおそる口にした。
結果はオーライで「もう一杯」となった。
さて、桟橋を離れたゴンドラはサンマルコ運河から狭い水路に入った。
昼間の喧騒が嘘のように静まり返った中、いくつかの石橋をくぐり進む。時折、直角に曲がったところでは船頭が声を掛け、巧みにゴンドラを操る。
暗闇の中、街灯にぼんやりと映し出された両側の中世の石造りの建物に、カンツォーネの歌声が吸い込まれていく。
ふと見ると、それぞれの夫婦は、タイムトンネルに入ったかのように寄り添ってこの風情を楽しんでいる。
私は8ミリビデオをまわしながらカヤの外。
40分ほどゆられて、ゴンドラはレストラン
『タベルナ・ラ・フェニーチェ』の近くの船着場に止まった。
そして、昼食を自炊でまかなったので、夕食はベニス屈指のレストランでの晩餐会となった。

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