|
 |
新入り操縦士
訪れる人々の夢が舞うカジノや
ネオン輝く大通りが、嘘のように
今朝のラスベガスの空はすがすがしく晴れ渡っている。
1991年(平成3年)2月、午前9時15分。
北陸のある会社の米国視察旅行の一行がチャーターした19人乗りの小型ジェット機は、グランドキャニオンに向けて飛び立った。
機内の座席は両側の窓に一列ずつ並んでいる。
私の斜め前の席に、
ブロンドのボーイッシュな女性が座っている。
時々、隣に座っている男性と話しをしながら、手に持っている書面に目を走らせ、何やらチェックしている。
いともの様子と違うので、恐る恐るその男性に
「何をしているのですか?」
と尋ねた。
「今日、新規採用をした操縦士の初フライトなので、
女性の教官が同乗しチェックを受けているのだ。」
と言った。
この操縦士は、他の会社の役員専用機の機長だったが、リストラでこの会社に応募してきたとのこと。
グランドキャニオンは峡谷を低空で飛行し、
観光客が景観とスリルを楽しむことで有名なところ。
今回は、そえにスリルの条件が1つ加わったようなもの。
気のせいか、何かぎこちない飛行に思われる。
時々、旋回するたびに朝の太陽が窓に反射してまぶしい。
1時間30分の飛行でグランドキャニオン空港へ着陸体制に入った。
『ドスン』
と車輪が地面についた音でホッとした時、
機体が左右に蛇行しているのが感じられた。
とっさにブロンドの教官を見ると、
隣の男性に目くばせして、手を広げ肩をすぼめた。
ようやく機体はエプロンに着いた。
自動車運転免許試験で、横に教官が乗り、一部始終をチェックされた時のことを思い出した。操縦士の気持ちがよく分かる。
グランドキャニオン観光後の帰り便は、女性教官が操縦してわれわれを安心させてくれた。
こんなに女性が頼もしく感じた旅行として、
冬のカナダでジャスパーからカルガリーへ大型バスで向かう途中、峠で猛吹雪にみまわれ、何度も立ち往生したとき、女子プロレスラーのような、女性ドライバーの巧みな運転で切り抜けて以来、久しぶりで、女性は素晴らしいと感じた。
翌日は、アリゾナ州のフェニックスへ定期便で飛んだ。
フェニックスから30分ほどの所にスコッツデールという町がある。ここは南部でも白人が多いところで、全米一の治安のよい避寒地となっている。
訪れた2月でも、日本の5月のような気候でわれわれを迎えてくれた。
ゴルフ場の多く、素晴らしいコースばかり。
また、若者向けにはコロラド川下り(ラフティング)や熱気球での日帰りアリゾナ砂漠ツアーなど、イベントも多い。
女性客に好評の、リゾートホテルではエステティックコースも組まれており、老若男女のリゾート天国となっている。
ようやく日本からのパックツアーも、
アリゾナに注目してきている。
|
 |
|
|
 |
|