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キーウエストの神風
「幹部社員を対象に海外研修旅行を考えている。」
金沢市に本社があるエレクトロニクス関連のH社の常務からの電話だった。
「ニューヨークで開催される業界の見本市を見学後、1・2箇所設備研修を兼ね、日本人のあまり知らないリゾート地のホテルを組み込んでほしい。」
この常務とは20年来の友達。
日ごろから斬新な考えを持っている人だと思っていた。
1989年(平成元年)の4月、
ニューヨークで視察を終えた一行は、一路アメリカ東海岸を南下してフロリダ半島のマイアミに到着した。
バスで、JT(日本たばこ産業)のTVコマーシャルでも有名になったセブンマイルブリッジを通り、北米大陸の最南端キーウェストに入った。
ここは作家アーネスト・ヘミングウェーの
「老人と海」の舞台となったところ。
彼が住んでいた家や、よく通ったバー「スロッピージョウズ」も現存し観光客の人気を集めている。
知り合いのスチュワーデスから聞いた話だが、
オーストラリアのパース・ギリシャのロードス島と並んでキーウェストがスチュワーデスの人気の場所だとか。
いずれも南国のきらめく陽光と、
夜はセクシーなくらい魅惑的な雰囲気が共通している。
私も好きな場所だ。
夕食を『九州』という名の寿し屋に予約を入れていた。
日本料理店風の座敷で、日本ではあまりお目にかかれないような具の大きなマグロの握りなどを堪能、盛り上がった。
そして翌日、『カーサ・マリーナホテル』のテラスでの朝食を終え、手荷物を持ち全員が席を立ったとき、隣のテーブルのアメリカ人老夫婦が両手を広げ、肩をすくめて
「オー・カミカゼ」とニヤリとした。
男性15人、何となくネズミ色。
全米一といわれる避寒のリゾートにたったの1泊、
何もしないで出発。
何とも異様な一団、と思われたようだ。
この10日間、戦前・戦中派の役員や部長の団体は大変なカルチャーショックを受けたようだ。
帰国してから、各人の研修レポートを読んだ常務は、
「意識改革の一助になったようで、考え方も積極的で柔軟な方向に変わっている。」と、評価。
毎年実施したいと語ってくれた。
TVでは、衛星放送が毎日のようにニューヨークの証券取引所や、ワシントンのホワイトハウスからニュースを送り続けている。
それを現地で肌で感じてきた団員の臨場感は、自分が激動する世界の流れに入っている、と感じているに違いない。
その後、240人の社員旅行も毎年実施。
海外へ出かけている。
「話題が豊富になり、ものおじしない」
など、効果が着実に上がっている様子にほっと胸をなでおろしている。
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