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危機一髪
トルコ1周の観光を終え、
イスタンブールからオリンピック航空で次の目的地、ギリシャの首都アテネへ飛んだ。
ロードス島への便に乗り換えるアテネ空港の待合室でガイドと落ち合った。
ベンチに座って書類を見ていると、横にスッと立つ人がいる。
顔を上げると、
「北河さん?」
「はいそうです。ガイドのSさんですね?」
「今日から4日間、私がご案内します。よろしく。」
こんな会話から彼女との付き合いが始まった。
1991年(平成3年)10月のことだった。
亜麻色の髪・小麦色の肌・均斉の取れたスタイル
一瞬、自分が外国映画の主人公になったような気分になった。
1時間余りの飛行機内で、スケジュールの打ち合わせを行った。
ギリシャ人の彼女は、大学卒業後、
ドイツ・フランスで語学の勉強をして、今は主にフランス人のガイドをしている27歳。
日本語の勉強もしており、今回私たちの団体のガイドを希望したとのこと。今、アテネのアパートで一人暮らしだとも言った。
古代ギリシャ史に大変詳しいガイドで、
ロードス島をくまなく案内してもらい、
5つ星ホテル『グランドホテルアスティアパレス』へ入った。
2日目は陽の光があふれるカフェテラスでの朝食。
思い思いのリゾートスタイルで三三五五集まってきた。
アテネを出てから私たちのほかに日本人を見かけない。
そういえば、フロントの両替所には日本円の換算率も表示されていない。
こんなことから久しぶりの外国らしさをお客様は感じたようだった。
午前中は海岸散策・読書などフリータイムとなっているので、私はいったん部屋に戻った。
昼食はプールサイドでランチョンパーティーを予定していたので、その打ち合わせの電話を入れていた時、ドアーチャイムが鳴った。
「泳ぎませんか?」
真紅のビキニで片手に本を持ったSさんが立っている。
「この部屋からの眺めはどうですか?」
とスタスタと部屋に入ってきた。
外国女性の屈託の無い明るさに慌てて、電話をすませた。
部屋の中が甘い香水の香りになった。
その後、すぐ彼女はきびすを返して
「先にプールへ行きます。」
と部屋を出て行った。
私ひとり合点の危機一髪だったようだ。
一行はロードス島で2泊した後、帰りはアテネまで1泊の航海だ。
午後3時に出航、波静かなエーゲ海を船は進む。
デッキから紺碧の海に映えるロードス島の白い家並が遠ざかってゆく。
今夜は波を枕に休むとしよう。
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