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自由行動日
パック旅行や団体旅行の日程によく
「自由行動日」が設けられている。
おし着せの旅行ではなく、
少しでもお客様にお好みの味付けをしてもらおう
ということからだ。
イタリアのミラノで、午前半日の自由行動となった時だった。
あるお客様が、昨日観光したミラノ市内にある
「サンタ・マリア・デレ・グラツィエ教会」にもう一度行きたいと言われた。
そこは、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」
の壁画があることで有名なところ。
たまたま、そこで販売していたその壁画の印刷画を
私がお客様にかさばらないお土産に、とお勧めしていた。
それを買い忘れたとのことだった。
自由行動日には、こんな効用もあったのだ。
その後、ホテルに戻った時、今度は別のかたがたが、
「ぜひ、本場のピザを味わってみたいので、
おいしいお店を探してほしい。」と言われた。
早速、ホテルのフロントに尋ねると、「この近くにある」という。昼近くになっていたが、たぶん開店しているだろう、
ということで歩きながら探すことになった。
道路沿いのいたるところに、小さな公園があり、
犬の散歩をさせている人がいる。
芝生の上では、のんびりと小鳥がえさをついばんでいる。
貸切バスで観光するミラノとは違った趣が感じられる。

ほどなく、お昼時の開店準備に忙しい各レストランの一角に目当てのピザ屋さんが見つかった。
典型的なイタリアーノのご夫婦で経営している
約30平方メートルくらいの小さなお店だった。
ご主人の話では、日本の雑誌社の取材を受け、
本に紹介されたことで、日本人もときどき訪れるとのこと。
大判でふくよかな味のピザは皆の評判となった。
自由行動日には、オプショナルツアー(別途旅行)が
企画される場合が多い。
選んで効率よく見物するには便利な旅行であるが、
時には味覚探訪や美術館めぐりなど、
自分の趣味にあったその地方の個性を味わう時間をぜひ持ってほしい。
帰国してから、
壁画があの買い忘れたお客様のお宅の居間に飾られているのを見た時、「自由行動日」の大切さを思い知らされたと同時にお客様がミラノの印象を深くしておられることに添乗員として感激したことだった。
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