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休息とお祭りの島
インドネシアの首都・ジャカルタに1泊
翌日、ボロブドゥール遺跡を見物の後、
夕方バリ島のデンパサール空港に到着した。
1994年(平成6年)の4月に実施した、
『第6回ご夫婦円満旅行』でのことだった。
のんびり、ゆっくりを目的とした今回は、
計画段階からホテルの選択がポイントだった。
団体の多い大きなホテルを避けて、
個人主体の隠れ家的なホテル
『フォーシーズンリゾート』に決まった。
太陽が沈み、心地よい風が吹き抜けるロビーでチェックインを終えて、それぞれのコテージへと向かった。
石畳を踏み部屋に入ると、木組の天井の下に白い天蓋つきのベッドが2つ目に入る。
続きの部屋の奥には、大理石の床に白いホーローの楕円形浴槽が置かれている。
部屋から海に向かっての庭には、2坪ほどの光が入った小さなプールがあり、ブーゲンビリアの花が、その明かりに映し出されている。
この部屋は、奥様がご都合でご一緒されなかったお客様と私の男2人。庭や部屋の中は、ほのかな明かりがムードを醸し、波の音が、かすかに聞こえるだけであたりは静まりかえっている。
夕食後、プールに入ったりしていたが、どうもいつもの様子と違うことに気がついた。
何か手持ち無沙汰なのだ。
やがてベッドに入ったのだが、
今度はやけに天蓋が目に付く。
横になり、レース越しにお互い目を合わせて苦笑い。
「金沢へ帰ったら、天蓋つきのベッドを注文しようかなぁ」
きっと残してきた奥様のことを思い出していたに違いない。
64歳の男性にこう言わせたのは、このホテルのせいで、
添乗員の私の責任ではない。
翌日、ホテルからバスで約1時間半ほどの海岸にある、夕陽の美しさで名高い『タナロット寺院』へ出かけた。
近づくにつれて人出が多くなり、皆、着飾っている。
男性は白の詰襟の服と、黄色の腰巻姿で若くて男らしい。
女性は色とりどりの長袖の上衣と腰巻をまとっていて美人揃い。頭には果物等を入れた籠を乗せている。
神様へのお供え物のようだ。
ガイドは年に2回ある寺院祭りだと言った。
通り道には、夜店が開かれ、アセチレンガスの火が昔の田舎の祭りを思い出させる。
海岸まで歩くと、ちょうど水平線に黄金色の太陽が沈むところだった。
人々は、打ち寄せる波に素足を洗わせながら、海に突き出た岩礁の上にある海岸寺院に列をついて登っている。
『バリ島は祭りの島』
と呼ばれ、毎月のようにどこかでお祭りが行われている。
いよいよ帰国する日、
部屋を後にしたとき、
「静かないいホテルだった。
もう一度家内を連れてこのホテルに泊まりたい。」
と同室のお客様が言った。
フリータイムにゴルフのお付き合いもさせていただいたのに、最後まで私がお気に召さなかったようだ。
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